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  講義「弘法大師と医療の心」

2006.02.27 山口大学医学部
2006/2/27 講義「弘法大師と医療の心」 山口大学医学部 (82分) mp3/37.6MB
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   医療と宗教は、古代には癒しという救済を行う一体のものでございました。お大師さまの教えを辿りますと宗教の根本は癒しにあるというふうに私は考えております。この頃は、この癒しという言葉が流行語のように使われておりますけれども、本来は宗教者の究極の使命であるわけであります。人間は四つの苦が根底にあるというふうに仏教では教えております。四苦八苦というようなことも言いますけれども、その四つの苦が生命のリスクと言いますか、生きることと背中合わせについてまわるものでこの苦しみをどうしたら癒すことができるのかという教えが仏教であるわけであります。
 この四つの苦というのが生老病死でございます。この苦しみを無くすることはできません。生きることも老いることも病むことも死ぬことも、この世に生まれて来た生命にとっては消したりそり落としたりすることはできない苦しみであるわけであります。生きることは動くことです。肉体を動かし、こころを動かし、思いを動かします。
動かし過ぎれば暴走し、足りなければ滞ってしまいます。その調和を知ることが生きていくことであります。また、この世の生命はいつかは老いていきます。この老いというのは感動を忘れること、好奇心を忘れる、そして楽に毎日を送ろうとすることが生きる力を奪うのであります。その結果、こころが縮んで恐怖や不安の温床を作りやすくなってしまうということになります。更に病は肉体を苦しめ、こころを苦しめ、愛するものたちを苦しめます。そして死という苦しみは、すべての生命にみな平等にやって来るものであります。
 この死は宇宙の法則によるものでございます。すべての生命が平等にこの世にピリオドを打つというのになぜ人は死に急ぎ、あるいは殺したりするんでしょうか。この死を知らなければ生を知るとこはできないと思います。苦しいけれども死を学んで人は育っていくわけであります。この生老病死という人間には根源的な苦しみの四つのなかで、生まれてくるということ、老いるということ、死ぬことの三つはどうしても避けては通れないものでございます。
 しかし、病気になるという苦しみを体験しないで亡くなる人もいるわけであります。病気もしないで元気なお年寄りの姿がテレビなんかで紹介されたりいたしております。そしてあるとき眠るように大往生をつげたというようにいわれる人は四苦ではなくて三苦を背負って生きたことになります。そのような健康に恵まれた健康な人は非常に少なく、ほとんどの人はお腹が痛いとか、風邪をひいたりというようなことから始まって病気になっていくのであります。
 どんな病気であっても苦しいものであります。その苦しみを癒すということは仏さまの道を歩く者の勤めであるというふうに空海、弘法大師は教えたのであります。ここで空海、弘法大師について少しお話ししておきたいと思います。空海、弘法大師は今から千二百年前に中国に渡って密教の教えを授かって日本に広めた人です。丁度、今年が丙犬の年ですけれども、その丙犬の年に帰ってきております。六十年が二十回過ぎたことでですね。還暦が二十回。この密教というのは仏教の教えの一つであるわけですけれども、お釈迦さまが説いた教えに従いながら、古代から伝わるアジア文化をここに取り入れてきた教えが密教であるわけでございます。
 私の寺には毎日毎日たくさんの方々が相談にやってきております。その多くの人たちが病気の人が多いんです。私はその方たちと共に祈っております。そして、その多くの方が不治とされた状態から抜け出したりしていらっしゃるのであります。こうして皆さんにお話ししてもなかなか信じてはもらえないと思いますけれども、世の中には治す力が無いのに加持によって病気を治すと宣伝して法外なお金取り上げるニセの宗教家がいっぱいおりますので、本来の加持とか仏さまの教えが正しく伝わらないきらいがあるわけであります。
 私はどんな病気の方であっても医師の治療は受けなければいけないというふうに言っております。加持というのは、いろいろな原因で低下している生命力を再生するお手伝いをするものであるわけでございます。病気になってしまったら医療によって体の修復をしなければいけない。仏さまにいただくのは医療をいたす生命力であるわけであります。生命力が病気と闘う力をもたらします。現代医学で言いますと免疫力に近い発想であろうと考えております。
(82分)



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