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  講演「医の心と宗教」

2006.07.25 講演「医の心と宗教」 第二回日本心体美学会特別講演 東京ガーデンパレス
2006/7/25 講演「医の心と宗教」 第二回日本心体美学会特別講演 東京ガーデンパレス (55分) mp3/25.4MB
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   私は弘法大師、空海、お大師さまが開かれました真言密教の行者でございます。日本では、最近でこそ違和感が薄らいできたようでございますけれども、それでもお坊さんが医療の話をするということに驚かれる方が少なくありません。日本では久しくお坊さんというのは葬式のときに必要な職業であるというふうに思われています。ですから私たち僧侶が病院へ見舞いに行ったりいたしますと、お医者さんとか他の患者さんから白い目で見られるから、今度は背広で来てもらえんですかというふうに言われたこともあるわけでございます。
 今でも一般的には、医療は人を生かすもの、宗教は死に行く者とか遺族のためにあるものというふうに思っていらっしゃる方たちが沢山いらっしゃると思います。しかし、宗教、私の場合は仏教でございますけれども、仏教は本来死んだ人のためにあるのではなくって、生きてる人のためのものであるわけでございます。
 人間がより良く生きるための教えが仏教であるわけでございます。現代の言葉でいいますと仏教はクオリティ・オブ・ライフ、これを高めるための思想と言えるんじゃないかなと思います。
 私は毎朝起きますと空を見上げます。雨の日とか、曇りの日もございます。晴れた青空に雲が所どころ浮かんでおります。その雲に昇ったばっかりの太陽の光が金色に映えておったりいたしますと、気持ちが晴れ晴れといたします。雲は一つとして同じ形のものはありません。ほんとに一瞬ごとに形を変えながら空を流れていっております。
 私は、そんな雲を見まして、私たちのこの生命も同じじゃないかなあというふうにいつも想うのであります。この世の中には沢山の生命が存在しまして、すべて形も中身も違っております。そして、それらは一瞬ごとに変っていっております。この生命が一瞬ごとに変っているというと、えっ本当かなと思われるかしれませんけれども、私たちは一瞬ごとに変化しております。細胞はつねに滅しては再生するという営みを繰り返しながら私たちの体を形づくっているわけであります。
 だからさっきまでの私と、今の私では体の細胞はどこかで入れ替わっておるわけであります。ただ、この私という生命は、生まれて死ぬまでこの池口恵観という個性を持って生きていくわけであります。
 生命はいつも雲のように一瞬、一瞬の輝きを見せながら、それぞれに生きているということであります。それを感じとることが出来るかどうか。仏さまとともに生きているかどうかの境い目にあって、感じることが出来る人は仏さまと共に生きる充実感を味わうことが出来るんだと思います。
 私は、生命を大切にするということは、この一瞬、一瞬の時間の積み重ねを感じ取ることから始まるんだというふうに思っているわけであります。それを感じ取るのは理論ではなくって、私たちのこのこころであるという、そういうところが本日の私の話のテーマになるわけでございます。
 このことは、こころと体の両面から健康美を追求していらっしゃる皆様方にも、きっと私は共鳴していただけるんじゃないかなあというふうに思っているわけでございます。
 私は現代医療にもっとこころの領域を付け加えた方がいいんじゃないかなあというふうに思っているわけであります。私は20年ほど前からいくつかの国公立大学の医学部で非常勤講師として、生命倫理、医療倫理に関する講義をするようになっておりますのも、医学界にそうした声が出てきた現われであるというふうに、私は受け止めているわけでございます。
 私は空海が開きました真言密教をやっているわけでございますけれども、仏教の別の宗派でもいい、あるいはキリスト教でもいい、他の宗教でも。宗教と医療との関りにもっと光を当てて、こころの医療を広めて行けたらいいなあというふうに思っているわけであります。
(55分)



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